うちのウディー犬が「別離不安症」である事は、知る人ぞ知る事実であるが、これは、性格の一部みたいなもので、症状を和らげる事は出来たのとしても、一生つきまとうのである。
犬を飼った事の無い人、また犬を飼っている人でも、別離不安な犬を経験した事が無い人は、私達の苦労はなかなか理解できないと思う。 もしかしたら、「何で犬ごときに、そんなに気を使うのか?」と思う人も居るかもしれないが、結局のところ、犬に気を使っていると言うよりは、近所迷惑を気にしていると言うのが一番の理由である。
ロンドンでウディー犬を飼い始めて3ヶ月以内に、ご近所から「動物愛護団体にうったえるぞ」と脅された。犬が一日絶え間なく吠えていた事に対するクレームだった。 その後、犬の行動心理学者を訪れ、色々アドバイスを貰い、何とか落ち着いた。それでも、近年、「君が家を出る直後、必ず犬が吠える、こっちは仕事で帰ったばかりで寝ているのに!」とクレームを受けた。 この人の場合、レストラン勤務で、帰宅が午前2時、3時とのこと。 はっきり言って、私達の知ったこっちゃない。 朝の5時ぐらいに吠えているのなら話は別だが、8時以降は、イギリスでは法律的にも工事などの騒音が伴う仕事を開始してよい時間帯なのである。 犬の吠え以外にも、ドアの開け閉めがうるさいだの、ごちゃごちゃ言ってくる人だった。
別離不安の症状として、「破壊行為」派と「吠え」派がある、勿論、両方という場合もある。 うちは後者の「吠え」派だが、破壊行為を伴うときもある(自分の家でない場合など)
別離不安の犬を飼うことはまるで、自閉症の人と一緒に住んでいるような感覚で、一日のサイクルがきっちり決まってなければならない。 「この次にはこれが来る」という明確なパターンを知る事により、安心感を持ち、その症状が和らぐのである。
例えば平日、仕事へ行く準備、その行動パターンが一定していると、比較的ウディー犬はおとなしく私達を送り出してくれる。一方週末のように、行動パターンが明確で無い場合はちょっと外へ出ようとすると吠え出すのだ。
その為、休日私達が外出するときは、一度お散歩へ連れ出し、戻ってきたら直ぐに出かけるなど、行動にある一定のパターンを作る様に心がけ、よってその症状を緩和させる努力をしている。 その為、短時間と言え、いきなり予定を変更して家を出ると言う事は避けているのである。 犬にとっては私達の外出が30分か5時間かはあまり関係ない。 犬はそのような時間的感覚は持っていない。 ただ、時間が長くなると、吠える確立は高くなるので、一回の外出は4時間、仕事をしている平日でも長くて6時間を限度にしている。
もう一つ、避けているのは、家にちょっと立ち寄って直ぐに家を出るというパターン。忘れ物を取りに戻るのも基本的には避けている。 例えば、午前中私がちょっと外出して、その後一緒にウディー(人間)と買い物へ出かける予定だったとする。その場合、私は家に戻らず、外で待ち合わせる。 私が家に帰ると、興奮し、その興奮状態で2人が家を出ると不安症の症状が増してしまうからだ。
冒頭で別離不安の犬を飼ったことが無い人はその苦労が分からないと書いたが、ペットシッターの仕事をしている知り合いのNさんはそれをよく理解している。 彼女の家にも別離不安の犬がお泊りに来る事があるらしい。 前回は床をがりがり掘って逃げ出そうとしたり、今回も朝起きたら家の中がビックリな状態になっていたらしい。 犬種はラブラドールで、どうやら「破壊」派のようだ。 別離不安症の犬は大変だと彼女のブログにも書いてあった。 社会性の有る無し、躾が出来ている、とはまったく関係が無い、別の分野なのである。
今住んでいるアパートは犬OKという事なのだが、契約上は「不可」になっている。 犬受け入れを拒否するとビジネスが成り立たないと言う事で、家主が非公認でOKとしている様である。 契約上「可」であれば、犬の吠え声もある程度、強気で居られるのだが、契約上「不可」とはっきり書かれてしまうと、そういう訳にも行かない。
私達はたまに外出中の様子をビデオに録画している。 これは、吠えの頻度や一回に吠え続ける長さなどをモニターする目的からだ。 私達の安心材料でもあるが、クレームを受けたときの確証とする目的でもある。
今のアパートへ入居後、お隣へご挨拶へ行った際、いきなり吠え声の話になった。 そのお宅は犬を飼っており、以前ご近所から吠え声に対しクレームを受けた事があったらしく、気を付ける様にとの忠告だった。 入居一週間以内ですでに吠え声の話。 まぁ、ウディー犬を飼っている以上一生お付き合いて行かなければならない、持病みたいなものなのである。